鳩はなぜ帰ってこれる?鳩の秘密紹介
鳩は厩舎(きゅうしゃ)から飛ばしても、自力で戻ってくることができます。インコなどはロストすると自力でお家に戻ることは難しいのに、なぜ鳩はできるのでしょうか。ここでは、そんな鳩の秘密を元ピジョンハンドラー(鳩の調教師)が紹介します。
鳩が自力で帰ってこれるエビデンスは不明
鳩が外へ飛ばしても元の場所へ戻ってくるエビデンスは、実はまだ未解明なのです。太陽の位置に関係している、磁力を利用しているなどの説があります。しかし、わかっていることもあります。それは、戻ってこれるのはそこで産まれたまたはヒナの時からいる鳩限定だ言うことです。このような鳩は、レース鳩と呼ばれ、どれだけ遠くの距離から短時間で厩舎へ帰ってこられるのかを競うスポーツで、競馬のようなものです。日本ではレース自体はありますが、レース鳩の賞金だけで暮らしていけるほど盛んではありません。ベルギーなどのヨーロッパでは、レース鳩を本職としている方もいるほど盛んに行われています。
レース鳩には大きく3種類に分類される
- レース鳩:実際にレースに出る鳩
- 種鳩:血統の良い鳩で掛け合わせて優秀なレース鳩の卵を産む
- 仮鳩:種鳩の代わりに抱卵~育児をする
レース鳩は、公園などでよく見かけるカワラバトを使用します。レース鳩の世界には、実際にレースに参加するレース鳩のほかに、良い血統の鳩で、子孫を増やす目的の種鳩、種鳩に代わり卵を温めヒナの育児をする仮母の3種類がいます。種鳩は大きなレースで優勝した経験のある、馬でいうところのサラブレットです。より良いレース鳩をつくるために、良い血筋通しの鳩を掛け合わせ、卵を産ませます。卵を温めヒナを育てるには体力が必要なため、なるべく多く卵を産んでほしい種鳩の負担軽減のために、卵は別の鳩(仮鳩)に抱かせます。
厩舎に帰ってこれるのはレース鳩だけ!
基本的に厩舎(鳩の飼育施設)から飛ばして戻ってこれるのは、レース鳩だけです。種鳩や仮鳩は、専門のショップから買ったり外国から輸入してくる個体がほとんどです。万が一種鳩や仮鳩を飛ばしてしまうと、彼らは元居た場所に向かって飛んで行ってしまいます。普段から訓練をしていない鳩は、長距離を飛ぶことができません。タカなどの天敵に捕まったり、途中で野生化したり、輸入した場合は海の上で力尽きてしまうことがあります。
また、レース鳩も全てが帰ってこれるわけではありません。基本的に群れで飛ばしますが、強い鳩ほど集団の中央に集まる傾向があります。これは、天敵に襲われた際に身を守りやすくするためです。また、飛ぶのを嫌がったりその辺でサボってしまう鳩もいます。このような鳩は、実際レースに出した際に帰ってこれる確率が下がります。つまり、レース鳩でも優秀な鳩だけが戻ってくることができるのです。公園などでみかける足環のついたカワラバトは、ほとんど厩舎出身です。
鳩のレースってどうやってるの?
鳩のレースは日本では趣味程度で行っています。しかし、ベルギーなどのヨーロッパでは競馬のように高額な優勝賞金がつくことや、良い成績を残した鳩は高値で取引されたりします。私が知っている一番高額だった鳩は、一羽で3千万円でした。この鳩を万が一ロストしてしまったらと胃が痛かったです・・・。鳩はかけ合わせのために移動させることもあります。
レースのやり方ですが、大体各市町村で鳩が好きな方の集いがあり、鳩が飛ぶ距離が同じ位置になるよう調整し、一斉に飛ばします。何羽飛ばすのかなどの決まりはありません。鳩の足環は特殊な構造になっていて、厩舎にある機会と連携してどの番号の鳩が帰ってきたかがわかるようになっています。はじめは30㎞ほど離れた位置から開始し、徐々に距離が伸びていきます。当然短い距離程機関率は高く、遠くなるほど低くなります。最終的に100㎞の距離を飛ばします。鳩はおよそ時速80㎞で飛びますが、100㎞となると帰還までに5~6日かかります。私が勤めていた厩舎では、はじめは300羽ほど飛ばしますが、徐々に数が減っていき、100㎞から帰還したのは5~6羽程だったと記憶しています。
ピジョンハンドラーって何をしているの?
- レース鳩のトレーニング
- 種鳩の掛け合わせ
- 仮鳩への卵移動
- 卵を抱いているペアの個体判別
- 有精卵の有無
- ヒナの管理
- 足環の管理
- 掃除やエサやりなどの雑務
主に上記のことをしていますが、業務内容は多々あります。生き物を扱っている仕事なので、業務内容は体を張った重労働です。日本ではあまり目にすることのないマイナーな職業でもあります。私の勤めていた厩舎には、鳩がおよそ3千羽いましたので、掃除やエサやりだけでもなかなか時間がかかります。鳩の脂粉がすごすぎて、勤務していた時期はマスクをしていても咳が止まりませんでした。とにかく大変な仕事ですし、なかには見たくないものをみなくてはならないこともありました。
鳩がなぜ帰ってこられるのかは不明
なぜ鳩が自分で厩舎に帰ってこられるのかは、まだ未解明です。しかし、どの鳩でもできるわけではなく、トレーニングされた鳩の中でも優秀な個体のみ帰還することができます。公園でよく見かけるカワラバトの多くは、レース鳩が野生化したものです。レース鳩はほかのカワラバトより筋肉質であることや、足環をしていることが特徴です。鳩が自力で元居た場所に帰還できる理由がわかれば、インコのロスト対策にもいかせるかもしれません。